保有技術(免震構造について)

免震構造のコストダウン・コストアップ

免震構造のコストダウン要因

  1. SRC造からRC造へと容易に変更でき、鉄骨が不要に
  2. 通常の耐震建物より躯体のスリム化、断面・配筋の低減が可能(※右図参照→)
  3. 杭径や杭筋が小さくなる

免震構造のコストアップ要因

  1. 免震部材が必要になる
  2. 免震ピット層が増える(掘削・躯体費)
  3. 設備の可撓配管費用が増える
耐震と免震の断面・配筋の低減比較

建物の高さ・供用年数とコスト

マンションで考えると、一般的に低層(〜5階建て程度)ではコストアップ要因の方が大、高層(7・8階を超える)ではコストダウン要因が大で、さらに階数が増えると、顕著にコストダウンが図れます。
免震と通常の耐震建物とでライフサイクルコストを模式図にすると、一般的に右図のようになります。地盤や建物形状などにもよりますが、低層で免震のコストアップ要因が大きい場合でも、建物供用中に受ける地震の補修費用を勘案すれば、トータルで免震のコストメリットがあるといえます。

マンションの高さと供用年数

地震観測による免震効果の実測例

File1.1995年 兵庫県南部地震(阪神大震災)

最大加速度(cm/s2 方向
免震棟
RC3F
南北 東西 上下
RFL 198 273 334
1FL 148 253 266
基礎 272 265 232
非免震棟
S3F REL
965 677 368

免震建物の強震記録が日本で初めて得られた例です。免震棟と非免震棟が並立しています。水平方向では、非免震棟では地盤の揺れ(272gal)が建物で4倍ほどに増幅(965gal)し、1G(981gal)近い応答になっています。建物内の家具や備品はぐちゃぐちゃになりました。
対して、免震建物では、地盤の揺れ(265〜272gal)は増幅しない(273gal)か若干低減(198gal)しています。建物内で家具の転倒などはありませんでした。上下方向は非免震・免震とも、ほぼ同等でした。 建物名:松村組技術研究所 神戸市北区
出典:日本建築センター「免震構造物 その技術開発と地震観測結果 Part2」1995年

File2.2004年新潟県中越地震

小地谷市民病院の建物軸組図とEW方向観測記録

建物名:小地谷市民病院 新潟県小地谷市
出典:留正俊ほか、「2004年新潟県中越地震における小千谷市内の免震建物の挙動」、日本建築学会大会学術講演梗概集(近畿)2005年9月

File3.2005年福岡県西方沖地震

建設技術研究所CTIビル(福岡市中央区)

基礎489gal→7階屋上234galに低減しています。1階と7階とでほとんど同じ動きをしています。すなわち、建物自体はほとんど変形せず、剛体的にゆっくりと揺れることがわかります。 建物名:建設技術研究所CTIビル(福岡市中央区)
出典:松田泰治ほか、「福岡県西方沖地震における大名地区の免震建物の挙動」、日本建築学会大会学術講演梗概集(近畿)2005年9月

耐震・免震の揺れのアニメーション

3つの建物について、免震建物と通常の非免震建物の地震時の揺れをアニメーションにて比較します。
このアニメーションは、地震応答解析結果を可視化したものです。免震建物では変形のほとんどが免震ゴムに集中し、上部建物の変形が非常に小さいことがわかります。対して、通常の非免震建物では建物各階が大きく激しく変形し、地震終了後の残留変形も過大であることがわかります(再使用不可〜大規模な補修が必要)。頂部加速度表示を見ると、免震の方が揺れ(応答加速度)が非免震の1/3程度であることがわかります。家具の転倒などが生じないレベルです。

15階建てRC集合住宅(「ATマンション」)
ムービーファイル 入力地震動 視点
AT_HC_REL_V1.swf HACHINOHE 1968 NS
50cm/sec
斜め上より
AT_HC_ABS_V1.swf
AT_KB_REL_V1.swf JMA KOBE 1995 NS
90cm/s
(阪神大震災)
斜め上より
AT_KB_ABS_V1.swf 斜め上より
AT_KB_ABS_V3.swf 真横より
AT_KB_REL_V2.swf 真上より
AT_KB_REL_V3.swf 真横より
AT_R6_REL_V3.swf 告示ランダム位相
(Z=0.8相当)
真横より
AT_R6_ABS_V3.swf
9階建てRC病院(「MG病院」)
ムービーファイル 入力地震動 視点
MG_KB_REL_V1.swf JMA KOBE 1995 NS
90cm/s
斜め上より
MG_KB_ABS_V2.swf 真上より
MG_R6_REL_V3.swf 告示ランダム位相
(Z=0.8相当)
真横より
22階建てRC集合住宅(「免震構造設計指針2001年度版・設計例2」)
ムービーファイル 入力地震動 視点
AIJ22F.gif EL CENTRO 1940 NS
50cm/s
真横より

相対変位:地上から見ている。 絶対変位:地面も動く

免震建築物の設計ルート

免震の設計ルート(許認可)には、大きく次の告示2009号第6による静的設計(告示ルート)と、時刻歴応答解析による動的設計(大臣認定ルート)の2つのルートがあります。

告示ルート 大臣認定ルート
  • 建物高さが60m以下
  • 基礎免震
  • 急傾斜地・崖地ではない
  • 第1種地盤または液状化しない第2種地盤
  • 建設地の工学的基盤(深部の非常に硬い地層)が広範囲で傾斜していない
  • 超高層建物(高さ60m超)
  • 軟弱地盤(液状化が顕著な地盤や第3種地盤)
  • 中間階免震
  • より躯体コストを低減したい場合

※上記の両ルートとも、審査機関で設計期間の事前打ち合わせが必要です。

エス・エー・アイの免震研究

免震研究

設計とともに、免震についての研究開発にも注力しています。
現在、数年間のプロジェクトとして、「地盤のN値からせん断波速度Vsを推定する試み」と題して、簡易に地盤の情報を設計に反映するための研究を行っています。詳しくは論文一覧をご覧ください。